Kinsei R&D | Fujimoto Takayuki Works

Time Lapse Plant

Performance, Installation directed by Fujimoto Takayuki / 2009 - 2015

OVERVIEW

この作品は、上方に吊られた数個のリング(円形トラス)と、音響システムで構成される。リングに均等な間隔でセットされたLED灯体は、その下の床に置かれたオブジェや、そこに立つ鑑賞者の影を鮮明に作る。それらの照明が最速で0.02秒毎に1台ずつ点灯して、オブジェや鑑賞者の頭上で光を回すと、床に映るモノやヒトの影は、まるでアニメーションのようにそれぞれの本体を軸に滑らかに廻る。
影は、あくまでもその本体の投影であり、その動きを真似るが、LEDによるその回転運動は鑑賞者には制御できない。廻る速度や方向の転換は、コンピューター制御され、そして同時に、現実感を強化する音が、影の動きと完全に同期してPCからジェネレートされる。さらに、LED照明の特徴であるRGB光を独立してコントロールすることにより、同時にいくつもの色の付いた影を、走らせることができる。例えば、赤い光の廻る速さや向きと、緑+青の速度/方向を変えると、緑+青の光が遮られてできる影は赤色になり、赤い光が遮られてできる影はシアンに染まる。
この、影を回すという効果は、一見すると正確な照明制御技術さえあれば実現できそうだが、実はこれまでの照明機材では、非常に短い間隔での光の正確な点滅ができず、影の形や運動をクリアには表現できなかった。まったくタイムラグなく点滅が可能で、PCによって最速0.02秒のコントロールができるLED照明の実用化によって、初めて可能になった表現であり、それに加えて、RGB値の調整で多様な色彩表現を実現できることで、影のバリエーションが広がっている。
また、タイトルに使っている「time lapse」とは、通常「time lapse photography」という映像用語で知られ、植物の生長や雲の流れ、街や風景の変化などを、1秒間に1コマ(あるいはそれ以上)という非常に遅いスピードで撮影する低速度撮影の技法で、日本語ではインターバル撮影と呼ばれる方法で撮影された映像を意味する。
この作品は、2010年2月に開催された「第2回恵比寿映像祭(東京都写真美術館)」の嘱託を受け、09年末から横浜のBankART1929で滞在制作行い、翌年初頭の同会場での『2_Rings』展示を経て、2月の映像祭会期中、恵比寿ガーデンプレース大屋根下の広場で『4_Rings』を展示。また、展示期間中に、作品を使ったダンスパフォーマンス『Time Lapse Plant 4 Rings_4 dancers improvisation』等も行っている。
そして、2013年には横浜で行われたスマートイルミネーション内で『1_Ring』を、2015年1月にはフィンランドのヘルシンキで開催された光のフェスティバル Lux Helsinki 2015において『3_Rings』バージョンを展示している。


PRODUCTION NOTE

影が動くことで、私達は「時間」を感じる

風にそよぐ木葉や、弾むボール、走っている自動車など、動いているモノを見ている時、私たちの中では何が起こっているのか?
「見る」事は複雑である。近年の脳の研究によって、ヒトの脳におけるその仕組みが次第にわかってきている。

例えば、こちらに向かって飛んでくるボール。そのボールの表面で反射した光は、眼球内のレンズを通して焦点が調整され、網膜にある錐体と棍体というセンサーに届く。そこで光から、各センサーに探知可能な刺激のみがピックアップされる。ヒトが、赤(R)・緑(G)・青(B)の三原色で色を見るというのは、実はこの網膜にある錐体/センサーが、RGBそれぞれの波長域周辺のみ (R=700nm、 G=530nm、 B=470nm) を感知する事に因っている。
そして、その各センサーの収集したデータ/刺激は、視神経を通じて脳の複数の部位に伝えられる。

私たちの「見ている」ものは、決してモニターやスクリーンに動画が映るように、脳内に投影されている訳ではないのだ。
RGBの刺激は、その比率によって色に再構成され、刺激を受けたセンサーをマッピングし形が認知される。そしてその形象の継続的な変化から、動きとそしてさらにいえば時間が認識される。これらすべては、脳内の幾つかの部位で、その瞬間瞬間に作り出されているのだ。
そして、「視る」ことと「聴く」ことは、密接に繋がっており、相互に補助することで「現実感」を強化している。
そのように、脳のいくつもの箇所で生成された情報を、統合し再構成してこそ、ヒトは世界を認識できる。

Time Lapse Plant は、この視ることの複雑さと時間感覚に揺さぶりをかけ、あえてそれらの感覚を惑わせることで、「現実感」自体の再認識を促す。


PRODUCTION CREDIT

2 Ring Version | 4 Ring Version | 1 Ring Version

監督・照明 藤本隆行 (Kinsei R&D)
音楽真鍋大度 (rhizomatiks)
機構設計石橋素 (rhizomatiks)
音響システムデザイン稲荷森健
  
技術協力カラーキネティクス・ジャパン株式会社
有限会社タマテックラボ

3 Ring Version

監督・照明 藤本隆行 (Kinsei R&D)
音楽Aake Otsala (Sun Effect)
制御プログラミングJuan P Gimenez
  
提携Sun Effect / Finland

PRODUCTION SCHEDULE

2 Ring ver.2009 12/25-2010 1/11BankART 1920横浜日本
4 Ring ver.2010 2/18-28恵比寿映像祭東京日本
1 Ring ver.2013 10/23-27スマートイルミネーション横浜日本
3 Ring ver.2015 1/4-8LUX HELSINKI 2015HelsinkiFinland

MOVIES

Time Lapse Plant 4 Rings_4 dancers improvisation (2010)